朝起きたときの腰痛についてご相談を受ける中で、「原因はこれだと思っていました」と患者様ご自身が考えている内容と、実際の身体の状態にズレがあるケースは少なくありません。
一見もっともらしく感じる考え方でも、実は誤解が含まれていることもあります。こうした思い込みがあると、適切な対処ができず、症状が長引いてしまうこともあります。
ここでは、当院でよく耳にする「朝の腰痛に関する勘違い」を3つご紹介します。
①「寝相が悪いから腰が痛くなった」
「朝起きると腰が痛いのは、寝相が悪かったからだと思います。」このようなお話を患者様からよく伺います。
確かに、無理な姿勢で長時間寝てしまうことで一時的に腰へ負担がかかることはあります。しかし、寝相が悪いことが必ずしも悪いわけではありません。
実は、睡眠中に適度な寝返りを打つことは、身体への負担を分散させたり、血流を保ったりするためにとても重要な働きです。寝返りによって同じ部位への圧迫を避けることができ、筋肉や関節への負担を軽減する役割があります。反対に、一晩中ほとんど寝返りが打てない状態のほうが、同じ場所に負担が集中しやすく、結果として腰痛につながることがあります。
また、寝返りには体温を調節する役割もあります。室温が高すぎたり低すぎたり、季節に合わない寝具や寝間着を使用していたりすると、寝返りの回数が増えたり、睡眠の質が低下したりすることもあります。
朝の腰痛が気になる方は、寝相だけを気にするのではなく、寝室の温度や湿度、寝具や寝間着など、睡眠環境を整えることも大切です。
②「スポーツをしているから運動不足ではない」
「週に何回もスポーツをしているから運動不足ではありません。」
このようにおっしゃる方も少なくありません。もちろん、スポーツを楽しむことは健康維持やストレス解消の面でも非常に良い習慣ですし、継続していること自体はとても素晴らしいことです。しかし、野球・ゴルフ・テニス・ランニング・サッカーなど、多くのスポーツにはそれぞれ特有の身体の使い方があります。同じ動作を繰り返すことで、一部の筋肉や関節に負担が集中しやすくなり、身体のバランスが崩れてしまうこともあります。そのため、スポーツをしているからといって、身体全体がバランスよく動かせているとは限りません。
実際に当院でも、競技を続けている方ほど股関節や腰まわりの柔軟性が低下していたり、左右差が大きくなっていたりするケースをよく見かけます。特に、同じ方向への動きが多いスポーツでは、身体の偏りが強く出ることがあります。スポーツはもちろん続けていただきたいですが、それに加えてウォーキングや軽いストレッチなど、身体を整えるための運動を取り入れることも、腰痛予防や改善にはとても重要です。
③「腹筋を鍛えれば腰痛は治る」
「腰が痛いのは腹筋が弱いから。」
一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。これは半分正しく、半分は誤解です。
例えば、反り腰の方では腹筋が十分に使えておらず、その影響で腰へ負担がかかっている場合があります。このようなケースでは、腹筋の働きを改善することが必要になることもあります。しかし、だからといって、やみくもに腹筋運動を繰り返せば改善するというわけではありません。
身体の状態によっては、腹筋の中でも鍛える必要がある部位があったり、股関節やお尻の筋肉、体幹の深い部分の筋肉(インナーマッスル)を優先して使えるようにしたほうが良いケースもあります。また、筋肉の柔軟性や関節の動きが不足している場合には、トレーニングよりも先に整えるべきポイントがあることもあります。
間違ったフォームや自分に合わないトレーニングを続けてしまうと、かえって腰への負担を増やしてしまい、症状が悪化することもあります。
大切なのは、「腹筋を鍛えること」ではなく、今の身体に必要な筋肉を、正しく使えるようにすることです。腰痛の原因は一人ひとり異なるため、ご自身の身体の状態に合った運動やトレーニングを行うことが、改善への近道になります。