身体の状態を聞かれた時、多くの方が最初に考えるのは「痛いか、痛くないか」ではないでしょうか。
昨日は痛かったけれど、今日はそれほど痛くない。右肩は痛いけれど、左肩は大丈夫。こうした痛みの変化は、身体の状態を知るための大切な情報です。
ただ、私は施術をする時に痛みの強さだけで身体の状態を判断することはありません。痛み以外にも、身体から得られる情報はたくさんあるからです。
痛みが少ない=身体の状態が良い、とは限りません
例えば腰痛が「10から3くらいまで減った」とします。痛みが減っていること自体は良い変化です。しかし実際に身体を動かしてみると、まだ腰をかばって立ち上がっていたり、身体を前に倒せる範囲が狭かったりすることがあります。
反対に、本人としてはまだ痛みを感じていても、以前より身体を動かせる範囲が広がっていることもあります。痛みは身体を判断する一つの材料ですが、それだけですべてを判断することはできません。そのため当院では、痛みだけではなく、身体の動きや左右差、実際の動作も確認するようにしています。
左右差があると、身体は悪いのでしょうか
身体を確認していると、右肩の方が高い。首が右より左の方が回しにくい。片方の股関節の方が硬い。このような左右差が見つかることがあります。
左右差があることを伝えると、「身体が歪んでいるということですか?」と心配される方もいます。しかし、人間の身体はもともと完全な左右対称ではありません。
利き手や利き足がありますし、普段の仕事や家事、スポーツによっても左右の使い方は変わります。ですから、左右差があること自体を悪いものとして考える必要はありません。
大切なのは「その左右差が何に影響しているか」
私が確認したいのは、左右差があるかどうかだけではありません。その左右差が、今困っている症状や動作と関係しているのかを見ています。
例えば首が左へ回しにくかったとしても、日常生活で困っておらず、痛みもなければ、その左右差を無理に揃える必要がない場合もあります。
一方で、車を運転して後方確認をする時に毎回首が痛むのであれば、その動きにくさは確認しておきたい情報になります。
左右を同じにすることが目的ではありません。その人が困っていることと、身体の状態を結びつけて考えることが大切です。
痛み・動き・左右差を合わせて考えます
例えば肩が痛い方であれば、痛みの強さだけを確認するのではなく、実際に腕を上げてもらいます。
どこまで上がるのか。左右で違いはあるのか。途中で痛むのか。最後まで上げた時だけ痛むのか。身体を傾けながら腕を上げていないか。こうして確認すると、「肩が痛い」という一言だけでは分からなかった身体の状態が見えてきます。
腰痛でも同じです。前に曲げる、後ろへ反らす、身体をひねる、立ち上がる、歩く。実際に動いていただくことで、痛みの強さだけでは分からない部分を確認できます。
施術後も「痛くないですか?」だけでは終わりません
これは施術後も同じです。痛みが減ったかどうかはもちろん確認します。ただ、それだけではなく、施術前に動きにくかった方向へもう一度身体を動かしていただくことがあります。
動かせる範囲は変わったのか。左右差はどうなったのか。先ほど痛かった動作はどう感じるのか。こうした変化を施術前と比べます。
痛みが大きく変わっていなくても、身体の動きに変化が出ていることがあります。反対に、痛みは減っていても、動き方があまり変わっていないこともあります。どちらも、その後の身体を考えるための大切な情報です。
「左右対称の身体」を目指しているわけではありません
身体のバランスという言葉を使うと、左右をきれいに揃えることが良いように思われるかもしれません。しかし、私が目指しているのは左右対称の身体を作ることではありません。
痛みが少なく、必要な範囲まで身体を動かせて、仕事や家事、趣味などを無理なく行える。その方にとって必要な身体の状態を取り戻していくことの方が大切だと考えています。
痛みの数字だけを追いかけない。
左右差だけを見て「歪んでいる」と決めつけない。
痛み、動き、左右差、そして実際の生活で何に困っているのか。
当院では、こうした情報を合わせながら身体をみています。身体は、ひとつの数字や見た目だけでは判断できません。だからこそ施術の際には、「どこが痛いか」だけではなく、「何をすると困るのか」もぜひ教えてください。そこに、その方の身体を考えるための大切な情報があると考えています。