「先生、もう年だから仕方ないですよね。」
施術をしていると、この言葉を本当によく耳にします。肩が痛い、腰が痛い、膝が痛い。症状は人それぞれですが、「年齢が原因だから良くならない」と思い込んでしまっている方は少なくありません。そのたびに私は、「本当にそうでしょうか?」とお話しすることがあります。
もちろん、年齢を重ねることで身体にはさまざまな変化が起こります。
筋力は少しずつ低下し、柔軟性も若い頃ほどではなくなります。疲れが取れるまでに時間がかかったり、回復に時間を要したりすることも自然な変化です。しかし、それだけで痛みが出るのであれば、高齢の方は皆さん腰痛や肩こり、膝の痛みに悩まされていることになります。
でも、実際にはそうではありません。70代や80代でも旅行を楽しんでいる方、畑仕事を元気に続けている方、趣味のスポーツを長く続けている方もたくさんいらっしゃいます。その一方で、40代や50代でも慢性的な腰痛や肩こりに悩み、「どこへ行っても良くならない」と相談に来られる方も少なくありません。
この違いは、年齢だけでは説明できないと私は考えています。施術をしていて感じるのは、身体の状態は年齢よりも「これまでどのように身体を使ってきたか」の影響を大きく受けているということです。例えば、長時間のデスクワークが続いている方は、首や肩、腰の筋肉が硬くなりやすくなります。運動不足が続けば、筋力や柔軟性が低下し、関節への負担も大きくなります。反対に、適度に身体を動かす習慣がある方は、年齢を重ねても元気に過ごされていることが少なくありません。
もちろん、「運動している=痛くならない」というわけではありません。スポーツをされている方でも、その競技特有の身体の使い方によって負担が蓄積し、痛みにつながることがあります。つまり、大切なのは年齢ではなく、今のお身体がどのような状態なのかということです。
もう一つ、施術をしていて感じることがあります。それは、「痛いから動かさない」という悪循環です。例えば膝が痛い方は、「歩くと痛いから、なるべく歩かないようにしています」とお話しされることがあります。もちろん、強い痛みがある時には安静が必要な場合もあります。しかし、必要以上に身体を動かさない生活が続くと、筋力は徐々に低下し、関節も硬くなってしまいます。その結果、さらに身体が動かしにくくなり、痛みが長引いてしまうこともあります。
このような悪循環は、腰痛や肩こりでも同じです。だからこそ、「休むこと」だけではなく、「どうすれば無理なく身体を動かせるか」を考えることも大切だと感じています。当院では、痛みがある場所だけを施術することはしていません。もちろん、痛みのある場所を確認することは大切ですが、それ以上に「なぜそこへ負担が集中してしまったのか」を一緒に考えます。姿勢や身体の動き、筋肉の緊張、生活習慣、お仕事や趣味など、一人ひとり背景は違います。同じ腰痛という症状でも、原因が違えば必要な施術や生活で気を付けることも変わってきます。そのため、お身体の状態を確認しながら、その方に合った方法をご提案することを大切にしています。
「もう年だから仕方ない。」その考えが間違っているとは思いません。年齢を重ねれば身体は変化しますし、若い頃と同じようにはいかないこともあります。しかし、「年齢だけが原因」と決めつけてしまうのは、とてももったいないことだと私は思います。身体の使い方や生活習慣を少し見直すだけでも、今より楽に生活できるようになる方はたくさんいらっしゃいます。「もう仕方ない」と諦める前に、一度ご自身のお身体と向き合ってみませんか。原因を知ることが、改善への第一歩になるかもしれません。